2016年6月27日月曜日

一話 [オシロとジョーカー]

「ぬぅ……………よし、これだっ!! ………またジョーカー!?」
「ふふ、甘いですね部長さん。………これだっ!! ………やった、あーがりっ♪」
「はぁ!? おかしいでしょ!? 仕組みよ仕組み!!」
この狭い一室。この部屋で今まで行われて来たのは、伝家の宝刀。
その名はババ抜き。

ちなみに永遠に終わらないこのババ抜きは85回戦目だ。

「どうして毎回私が負けるのよっ!? そもそも波崎が勝ったのも私に対する接待じゃない!?」
「いやぁ、そうでもしないと部長は永遠に負け続けるじゃないッスか……」
「もういいわよ。飽きたわ、こんなクソゲー。もう二度とやらないと誓うわ」

部長がそう言って社長椅子にふんぞり返る。全く、容姿と比例して全てが子供っぽい。
今回の永久に終わらないババ抜き大会(二人だけ)は部長の提案だった。

その発端まで遡ろう。

――――――――二時間前――――――

「波崎!! ちょっと遅いじゃない。まぁ良いけど」
「あぁ、すいません部長。クラスのホームルームが長引きまして」
「なら良いわ。所で、他の二人は?」
他の二人とはこの[ジョーカー部]に所属する数少ない部員の事だ。一人は同じクラスで、もう一人はその妹。
確か運動部にお呼ばれしに行ってくるとか言ってた様な気もする。
「確か運動部に顔出して来るって言ってました。時期に帰って来るんじゃないですかね」
部長は不満そうにお気に入りの人形を抱えて社長椅子にふんぞり返る。

ぶっちゃけ暇だ。部長は不満げだし、遊び相手の二人も居ない。
特に部長なんかプ●ッツをボリボリ食べ始めている。これは大層暇な時の部長だ。
仕方無い、ここは何か部活らしい事を始めねば。

「そうだ部長。何か楽しめるゲームとかってありません?」
プリッ●を食べ終えた部長がごろ寝し始めた。そこを付く。
「あ、良いのがあるよ!!」

それで今に至る。

「そもそも二人が遅すぎるのよ。波崎はつまんないし」
「あれ、二人を尻目に軽く俺、ディスられてる?」
ディスられてるのは置いておくとして、やはり遅すぎる。顔を出すくらいなら遅くても一時間だろう。
「全く。今日は大切な日だったのに、残念だなぁ」
と、部長が椅子から体を起こし、机にだらしなく突っ伏す。
何気なくそれが気になって聞いてみる事にした。
「どうしたんですか部長。何か言わなきゃいけない事でも?」
「そうなのよ!! 小説化が決まったのよ!!」

恐らく今の顔は(´・ω・`)みたいな感じだろう。

「しょ、小説化…………ですか?」
俺がそう言うと部長は机から身体を起こし、何時ものように社長椅子にふんぞり返る。
「そうよ!! 小説化!! 私達のこの部活が、皆の目に知れ渡る事になるの!!」
全く理解出来ない。元々部長は理解すら出来ない人だったが、ここまで理解出来ないのは初めてだ。
「えぇっと、誰が小説を書くんですか………?」
「え? 小説って書く物なの?」
「まさかの小説を書く話以前の問題ですか貴方は」
その後、部長は少し頭のなかで考えた後、答えを出した。

「売れっ子小説家に[ジョーカー部]を書いてもらうのよ!!」
「最早突っ込みどころの大草原だぜ!!」
「ほら、最近って小説は文化じゃない。某先生も言ってたし」
「違うそれは漫画家」
おそらく部長はノリ半分で言ったんだろう。軽く受け流した方が良いな。
「じゃぁレーベルに頼んで来ました!!」
「うわぁ部長の行動力凄すぎー」
「頼んでも駄目だったので本社前で泣いて上目遣いで懇願したらオッケーだって言ってたよ!! やったね波崎!!」
「うんやったね部長。ある意味でやりやがったね!!」
「そのあと話してくれたおじさん達が電話で凄く謝ってたけど、あれはなんだったんだろう?」
「それは未来で知る事になるね!! まず一緒に謝りに行きましょう部長」

という訳で、正式に俺たちの部活、[ジョーカー部]が、小説化されました。
採用された小説家さん、マジですいませんでしたぁぁああああ!!!!!!!
by波崎 拓


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